憲法(渋谷秀樹)の書評・口コミ

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  • 渋谷秀樹ここにあり!

    「読書は、他人にものを考えてもらうことである」と、ショーペンハウエルは語りました。「人の書いた本を読むだけでは、あんたは何も考えてないんだよ。自分で考える訓練をしなさい」との趣旨であると理解しています。この見解の影響でしょうか。特に共著の法学書籍では、学説が網羅的に並べられるだけで、結局どの見解を著者が採用するのかわからない傾向にあります。
    否が応でも自分で考えさせられるのは良い所。しかし、法学の思考過程には中々慣れづらいものです。「いろんな見解があります。あとは自分で考えてね!」では、困ってしまう事もあるのではないでしょうか。
    本書は、まさに「法学の思考過程」を示してくれています。
    確かに、単著のほとんどは自らの学説を論証する目的で書かれています。まさに「思考過程」が現出するのです。しかし、渋谷先生の「思考過程」は、大変切れ味が鋭い。独自説を唱えるにせよ、判例・通説に賛同するにせよ、各部の結論に至るまでに納得のできる理由付けがきちんと示されているように思います。注釈の充実も相まって、渋谷先生の学問的誠実さが反映されていましょう。
    その鋭さがとりわけ光るのは、判例・通説への理路整然とした反論がなされる部分です。例えば部分社会論にかかる記述(本書653頁)は、判例変更の可能性のある今、改めて参照すべきご意見です。また、「歴史の浅い憲法学は、安易に13条で保障される権利と同値させる弊がある」(本書407頁)との問題意識から放たれる独特なプライバシー権論は、大変興味深いです。
    以上のような渋谷教授の思考過程を「辿る」ことによって、自らの法学的思考力を鍛えることができます。
    一方で、初学者の方には参照し難いのも事実です。ページ数も多いですし、時折少数説を採用する関係上、どうしても通説的見解の紹介が薄くなってしまいます。
    渋谷秀樹ここにあり!な本書。しかし、一番最初に手に取るにはやや敷居高めかもしれません。入門書の類を読まれてから、つまみ食いだけでもしてみる事をお勧め致します。もしかしたら、渋谷ワールドにハマるかもしれません。

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    • kenpou mania
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